ふっとぼーるを、気ままに…。

マンチェスターユナイテッドファン。好きな代表はドイツ、ドイツU-21。若手選手に無限の可能性を感じる。嫌いなクラブはとある白いクラブ。暇な時に読んで頂けたら嬉しいです。

攻撃における哲学のあり方とは

アーセナルVSマンチェスターユナイテッドは衝撃的なスタートで迎えた。アーセン・ヴェンゲルの作戦勝ちといったところだろうか。前半10分で2点。3点目をアレクシス・サンチェスがゴール隅に決め、もはやユナイテッドにはなすすべががなかった。マルシャルの個人技が一度だけ目立ったが、ユナイテッドは何もできなかった、というよりは何もさせてもらえなかったというほうがふさわしい。最終的に前半のポゼッションはほぼ互角となったが、前半20分はアーセナルが70%を記録した。こうなるとユナイテッドは戦術上何もできない。耐える時間に耐えることができなかった。ユナイテッドは今シーズン立ち上がりの失点の形が似ている。クラブ・ブルッヘサウサンプトンヴォルフスブルク。どれもユナイテッドは陣形が整っていなかった。共通している点はSB、CB間の連携不足からの崩しだった。ルーク・ショーやマルコス・ロホが怪我をしアシュリー・ヤングアントニオ・バレンシアによる急造DF陣だったかもしれないが、ユナイテッドの欠陥はおそらくDF陣より攻撃の点にあると感じる。むしろDFはここ数年に比べればいいほうだ。

もちろんこれは個人の見解にすぎない。攻撃陣の問題はここ10年で最悪の出来だと感じている。しかし、ファン・ハールは満足していただろう。これがいわゆる「哲学」なのだから。

第1にユナイテッドのアタックの仕方はまずポゼッションという大前提がないと成り立たない。新加入シュネデルランはこの点で、ハールの哲学に必要なピースとなる。逆に主導権を握られたらユナイテッドは何もできない。そこをついたのがアーセナルだ。ボールをユナイテッドに持たせず早いペースでボールを回し、そこからお得意の形に。それを何度も繰り返し、ユナイテッドは何度も「壁」を突かれ、一気に崩れ去った。

第二段階は全体的に圧力をかけることだ。ここでも新加入選手が役に立つ。バスティアン・シュバインシュタイガーだ。彼がピッチに入ると連続してユナイテッドの戦術通りの攻撃的な形になる。そこからワイドワイドに広がり、相手を散らしていく。

ファン・ハールの戦術において最も重要なのはここからだ。パスを繋げ繋げ、相手の出方を待つ。引きつけておき相手にスペースを与えるのだ。そしてそのスペースを利用する。個人的にはここに大きな問題があると感じている。そのスペースを利用するタイプの選手が非常に少ない。アンデル・エレーラぐらいだろうか。シュバインシュタイガーは「作る」役目を担っており、シュネデルランやキャリックも積極的に攻撃に参加するタイプではない。メンフィスとマタはサイドに散っており、中央にいるルーニーはあくまでボールをピッチ全体に供給している状態だ。ここでもアーセナルは見事に対策を講じた。味方選手間を非常に狭くコンパクトに、特にMF,DF間を非常に狭く、そして一直線にラインを作り、中盤からユナイテッドの選手層を押し出し、孤立させた。

確かに新加入マルシャルは新たなオプションとなっている。そこはプラスだ。ボールキープからの個人技や、ほぼゴールラインからの低いクロス。だがこれも若干19歳の出来次第だ。今の所褒めるところしかないが。

メンフィスについても書き加えておかなければならない。確かに個人技からのミスは多く、目に余るものがある。ただ彼を活かしきれていないのも確かだ。非常に自己主張が強いのはかつてのクリスティアーノも同じだった。

主にブリントのロングボールに関しては省略しておきたい。

アーセナル戦はもちろん、今季最悪な試合は3-0で勝利を収めたサンダーランド戦だ。ここを振りかえればユナイテッドの攻撃陣の弱点がわかると考えている。全くもって崩しが見えなかった。

結局のところユナイテッドがゴールを決めるにはあくまで相手次第で、前提が必要なのだということだ。アーセナルやシティのような崩しがほとんど見られていない。

 

果たしてこれが哲学なのか。少なくともマンチェスターユナイテッドに合う哲学なのか。大げさかもしれないがもしそうなら期待は持てない。少なくともユナイテッッドに合う形なのかどうか、問われる次第だ。

スカッド調査ーアーセナル編ー

基本フォーメーション

4-2-3-1

GKチェフ オスピナ

LSBモンレアル ギブス

LCBコシエルニー  ガブリエウ・パウリスタ

RCBメルテザッカー チェンバース

RSBペジェリン ドゥビュシー (チェンバース)

LCMカソルラ ウィルシャー アルテタ

RCMコクラン (ラムジー)ビエリク

LMFサンチェス (ウェルベック) イウォビ

CMFエジル ロシツキー 

RMFラムジー チェンバレン ウォルコット

CF ジルー ウェルベック キャンベル

 

GK

・スタメンは新加入ペドル・チェフ。コンディションも好調。オスピナは控えとしても十分。

 

DF

・プレミアビッククラブの中で一番バランスが良い。ローラン・コシエルニー、ペア・メルテザッカーの耐久性が問われる。 

・カラム・チェンバースはCBとして使われるか。しかし、スタメンとしてはまだ成長が必要。

・若いエクトル・ペジェリンには継続した出場機会を与えるべき。今シーズンが飛躍の年になればアーセナルのRSBは安泰だ。

 

MF

・作シーズン嬉しい誤算となったフランシス・コクランは今年もスタメンを譲ることはなさそうだ。献身的な守備の姿勢、セカンドボールに対する意識の高さなどが評価される。

サンティ・カソルラが三列目へ移行。縦へのゲームメイクが武器だが、メスト・エジルがトップ下に君臨する場合のバランスの悪さが気になるところ。

カソルララムジーのポジションを交換したほうが良さげだがウェンゲルの流動的なゴール前での崩しの理想にはハマらないか。固定することで適応する可能性は期待できる。

アレクシス・サンチェスのコンディションがまだ整っていない様子。

・中央を好む選手が多く、サイドを本職とした選手が必要。

・視野の広いジャック・ウィルシャーが一皮むければ嬉しいことだが、今年も負傷離脱により難しいか。

ポーランドの天才MFクリスティアン・ビエリクの存在。フラミニ、アルテタに取って代わるチャンスはあるが可能性は低い。

・中盤に一枚か二枚新戦力を加えるべき。現戦力がシーズン通してコンディションを維持できるかどうかは不透明。

 

FW

カリム・ベンゼマ獲得の可能性は低く、アーセナルが動いているかどうかも不明である。アタッカーの獲得は不要か。

 

スカッド調査ーチェルシー編ー

基本フォーメーション

4-2-3-1

GKクルトワ  ベコビッチ  ブラックマン

LSBアスピリクエタ ラーマン・ババ

LCBテリー チャロバー

RCBケイヒル ズマ

RSBイヴァノビッチ

LCMファブレカス ラミレス ロフタス・チーク

RCMマティッチ ミケル

LMFアザール モーゼス ベルトラン・トラオレ マリン

CMFオスカル (ウィリアン) ピアソン

RMFペドロ ウィリアン (ラミレス) クアドラー

CFジエゴ・コスタ ファルカオ レミー ケネディ

 

GK

・チェフの後釜として加入したベコビッチはすでに出場機会を得る。クルトワのポジションを奪う可能性はある。

 

DF

・フィリペ・ルイスの穴には新生ババを獲得。MFやWGも可能な多様な若手。

・昨シーズンブレイクしたクル・ズマがスタメンを確保するか。

ジョン・テリーとブラニスラブ・イバノビッチのコンディションが鍵を握る。テリーはミスが目立ちがち。

・ジョン・ストーンズエバートン)への三度目のオファーは却下される。

・右SBとCBに控えのDFが必要だが、期限内に二人は難しい。両方できるタイプの選手の獲得に動いているようだ。ストーンズがそうだろう。

 

MF

・基本的なメンバーは変わらず。それが凶となることも。

・昨シーズン終盤に出場機会のあったロフタス・チークがブレイクするにはまだ時間が必要。

バルセロナからペドロ・ロドリゲスを獲得。CFの層は十分なためウイングでのプレーが求められる。

・レンタル復帰組のベルトラン・トラオレは労働許可証がおりた。チーム残留が濃厚か。昨シーズンはフィテッセで17得点の活躍。

マルコ・マリンとルーカス・ピアソンの処遇が不明。 

・ビクター・モーゼスはプレシーズンで活躍。今年はチーム残留か。

 

FW

モナコからレンタルのラダメル・ファルカオは現在二番手。ロルク・レミの活躍次第では買取の可能性は低い。

ジエゴ・コスタのコンディションが万全ではない様子。

・新加入ケネディはレンタルか。

 

補足

・レンタル組が多い。アンドレアス・クリステンセン、ワラス、トーマス・カラス、ナタン・アケー、マリオ・パサリッチ、マルコ・ファン・ヒンケルダニーロ・パンテッチ、クリスティアン・アツー、イザイア・ブラウン、パトリック・バンフォード。控えを務められる実力はあるがいずれも経験不足。

 

     

 

スカッド調査 ーマンチェスターユナイテッド編ー

基本フォーメーション

4-2-3-1

GKデ・ヘア ロメロ ジョンストン リンデゴーア バルデス

LSBショー (ロホ)(ブリント)

LCBブリント ロホ エバンズ ブラケット

RCBスモーリング ジョーンズ マクネアー

RSBダルミアン バレンシア ヴァレラ

LCMシュネデルラン エレーラ (ブリント) (フェライニ

RCMキャリック シュバインシュタイガー

CMFヤヌザイ フェライニ (エレーラ)(メンフィス)(マタ)パウエル

LWGメンフィス ヤング アンドレアス・ペレイラ

RWGマタ リンガード (ヤヌザイ) (バレンシア

CFルーニー エルナンデス ウィルソン

 

GK

デ・ヘアには9月からの出場機会が予想される。ロメロに第1GKを任せるには若干の不安要素あり。ただし経験は豊富。

デ・ヘアの代役にはウーゴ・ロリストッテナム)、ベルナト・レノ(レバークーゼン)、ヤン・オブラク(アトレティコマドリー)、ヤスパー・シレッセン(アヤックス

レアルマドリーのケイラー・ナバス+金銭のトレードに応じる必要はない。ユナイテッドに金銭は必要なく、ナバスとのトレードに関して年齢、怪我、実力の面においてメリットが見い出せない。

 

DF

ルーク・ショーには継続した出場機会を与えるべき。世界トップレベルのSBになる可能性は大いにある。

・CBは放出しない限り補強は必要ない。補強するなら、ジョン・ストーンズエバートン)かアイメリク・ラポルテ(アスレティックビルバオ)のどちらか。

クリス・スモーリングの成長には大いに期待。

・マッテオ・ダルミアンは対人、ビルドアップの面で素晴らしい能力を発揮。バックアップにはギジェルモ・ヴァレラを固定するべき。実力に疑いの余地はない。アントニオ・バレンシアはRWGに戻したほうが良い。スピードの面でマタやヤングなどの他の選手と違いを作ることができるはずだ。

 

MF

・質、量ともに十分。シュネデルラン、シュバインシュタイガーキャリックのローテーションで使われるはずだ。

・アンデル・エレーラ、マルアン・フェライニはトップ下、セントラル二つの位置で活用できる。出場機会が増えるはずだ。

アドナン・ヤヌザイの出来次第だがフアン・マタはトップ下に固定するべきだろう。ゴール不足を解消する重要な役割を担えるはずだ。

・メンフィス・デパイはサイドのほうがより能力を発揮できるだろう。

・アンドレアアス・ペレイラジェシー・リンガードに期待。2列目ならどのポジションでもプレーできる選手であり、一皮向けた選手になる可能性がある。

ファン・ハールはトップ下にセカンドストライカーの役割を所望している。ニック・パウエルがハマれば嬉しい誤算だが実現薄か。ギグスはパウエルに大いに期待しているようだ。

 

FW

・タイプの異なった選手が控えており、バランス的には問題ない。仮に獲得するならば前線に張ることのできるタイプの大型FWだ。

・不安点は連携。二列目が高い位置を保ちがちで、ボールが入らない印象。改善の余地はあるが新たに選手を獲得する必要はない。

・FWのゴール不足はMFに問題あり。 

 

補足

U-21の層が薄くなり、DFからFWにかけての補強が予想される。ラフィック・ゼクニニ(17歳/MF/オッドBK)、ダエル・フライ(17歳/DF/ミドルスブラ)、リンカーン(16歳/MF/グレミオ)、ポール・ディックビー(16歳/MF/バーンズリー)、マット・オロズンデ(16歳/MF/NYレッドブルズ)、セルヒオ・ディアス(16歳/FW/セロ・ポルティーニョ)

 

ドルドムントが迎えたターニングポイント

 ユルゲン・クロップが今シーズン限りでの退任を発表した。2008年からドルトムントで監督を務めたクロップは、契約解除というあまりに不似合いな形でクラブを去ることとなった。モチベーターとして人気を博し、ドルトムントを経営破綻寸前からクラブを救い、ビッククラブの仲間入りに導いた彼の功績は、今後のドルトムントの歴史の土台となることは間違いない。

 それでも今シーズンは驚きと落胆の連続だった。大黒柱ロベルト・レバンドフスキバイエルン・ミュンヘンに引き抜かれ、代役としてトリノからチーモ・インモービレ、ヘルタ・ベルリンからアドリアン・ラモスアウグスブルクからチ・ドンウォンを迎え入れた。インモービレとラモスに関しては昨シーズン22点、16点と実績のあるCFだった。ところが蓋を開けてみれば、それぞれ現時点で21試合3得点、18試合2得点と期待はずれの結果に終わっている。ドルトムントのCFに求められるのは、ゲーゲンプレッシング含めの2列目との相互関係だ。ただシーズン序盤から新戦力の二人には、クロップ特有のスタイルを消化できなかった。そのためチーム全体での得点力アップに変更しようとしたが、最後まで完成系を見ることはなく模索し続けた結果となった。マンチェスター・ユナイテッドから復帰させた香川真司が、移籍前に比べ判断力が遅くなったりアイデアに乏しいプレーをしていたことも得点力の低下の一つかもしれない。マルコ・ロイス、ピエール=エメリク・オバメヤンなどの、香川にとっての「新顔」とのプレーに終始戸惑っていたような印象をうけた。もちろんバンドフスキの退団は1月の時点で決まっていたにも関わらず、タイプの違うFWを獲得したフロントにも少なからず問題はある。だが、戦術のバリエーションの乏しさや、敗北した前節からのチームの改善をシーズン通して解決できなかったクロップにやはり問題があるだろう。

 攻撃スタイルの変化は守備面でも影響した。チーム全体が得点力アップに傾いた結果、3列目とDFラインとの間に大きな穴が開き、あっさり得点される場面がよくあった。第19節、アウグスブルクのラウル・ボバディジャに打たれた一連の流れがよく反映しているかもしれない。

 改めて強調するが、クロップに対する批判は今シーズンだけのものであり、今後のドルトムントにも彼の財産が歴史を作ることは批判できない。監督を最後まで信じ、解任させなかったSDの判断は賢明なものだろう。

 後任はクロップと同じように1.FSVマインツ05での監督歴のあるトーマス・トゥヘルだ。クロップとは似て非なる監督だ。トゥヘルがフリーだったことは幸いだった。常に流動的なサッカーを好む彼がドルトムントを指揮することは、今のバイエルン・ミュンヘンにも厄介な敵になることは間違いない。クロップと同じように若手の育成にも定評があり、対戦相手の分析も欠かさない。選手歴はほぼないが、どこか新時代の監督になりうる雰囲気がある。

 移籍市場でテコを入れる必要があるが、それほど大幅な変化は必要ないように思う。選手の総入れ替えをせず、現スカッドに加えるだけで十分だ。個人的には4人加えたい。イルカイ・ギュンドアンが契約延長をしないと発表し、退団の可能性があるCMFにはマインツからヨハネス・ガイス。ギュンドアン同様、マッツ・フンメルスマンチェスターユナイテッドへの移籍が噂されているCBにはホッフェンハイムからニクラス・ジューレ、得点力をアップさせるため同じくホッフェンハイムからケビン・フォラント、あるいはアンデルレヒトからアレクサンデル・ミトロビッチを加えることができれば理想的だ。

 それでも新生ドルトムントには厄介な相手が多い。バイエルン・ミュンヘンはもちろん、ライバルのシャルケ04もだろう。ロベルト・ディ・マッテオシャルケ04には次世代の逸材が多く、覚醒すれば優勝も可能だ(カーン・アイハン、マックス・マイヤー、レオン・ゴレツカ、ルロイ・ザネ、ユリアン・ドラクスラー)。U-19シャルケは世界No.1に輝いている。

 そして今シーズン調子の良かった、ボルシアMG(、バイヤー・レバークーゼンヴォルフスブルクもそれぞれスカッドが充実し、ネクスト・ドルトムントにあとラストピースと迫っている。ブンデスリーガが世界No.1へと羽化をしている最中に、ドルトムントは一から歩み始めることとなる。想像以上に困難だが、非常に楽しみだ。

赤い悪魔が描くべきは、ファン・ハール退任後の未来

 今シーズンのマンチェスターユナイテッドはどうだったろうか。3−5−2、4−1−21−2、そして4−3−3と変化していった。『Telegraph』によると負傷者数は計68回。常に万全の体制では望むことは出来なかったが、うまくいったフォーメーションの変化は皮肉にも負傷者の多さも要因の一つだ。すでにシーズンの終盤ではあるが、満足いく出来ではない。何よりもそれはファン・ハールも十分承知しているはずだ。今年はあくまでCL圏内フィニッシュ。シーズン終盤でエンジンがかかってきた。それを証明するものがマンチェスターシティにホームで4点叩き込んだ32節だ。ユナイテッドの調子の良さをそのまま反映した結果だろう。アシュリー・ヤングマルアン・フェライニフアン・マタクリス・スモーリングと波に乗っている選手が勝利の立役者となった。もちろん、得点者以外の全員が与えられた自分の仕事をこなし、ダービー5連敗を防ぐことが出来た。

 ただ、チェルシーエバートン相手に何もすることが出来ず、改めて絶妙なバランスの上に立っていることが判明した。不運は続き、ウェイン・ルーニーマイケル・キャリックと大黒柱がシーズン終盤まで欠場の可能性があり、再び危機的状況に晒されている。

 今シーズンのユナイテッドの特徴の一つにポゼッションがある。首位チェルシー相手には71%を記録した。シュートは15本でチェルシーより8本も多い。ところが枠内は2本でチェルシーと同等だ。もちろん枠内シュート数が全てではないが、正確なシュートが打てないと勝つことはできないのは間違いない。これも今期のユナイテッドの特徴だ。組織を重視するあまり、フィニッシュにアイデアが乏しく、あまり崩しが見られなかった。ペナルティエリアの手前でボールを回し、結局サイドに回りクロスを上げる…その繰り返しだった。これも崩しの一つで、フェライニの特徴を生かした結果といえばそうかもしれない。ただもちろんクロスに合わせるだけでは勝ち続けるのは難しい。

 もちろんファン・ハールには時間を与えるべきだ。ただ、ある程度将来を見据えてチームを作らなけらば、ハールからライアン・ギグスに移行する際、また一からチームの若返りを図らなければいけない。そうするとまた不必要に時間がかかる。ウェイン・ルーニーロビン・ファン・ペルシマイケル・キャリックと後釜を探さなくてはいけないだろう。アシュリー・ヤングや、アントニオ・バレンシア、ナニ、にもそう言えるかもしれない。ファン・ハールもそれを見越してかわからないが、パディ・マクネア、タイラー・ブラケット、アドナン・ヤヌザイ、サイディ・ヤンコ、アンドレアス・ペレイラ、トム・ソープ、ニック・パウエル、ジェシー・リンガードと多くの若手を起用した。そうそれなりにきたいはできるだろう。それでも新米CEOエドワード・ウッドワードの補強リストはある程度の年齢のビッグネームが目立つ。当分は厳しいかもしれないが、それでも期待の若手に投資するべきだ。ガレス・ベイルが抜けたトッテナムルイス・スアレスが抜けた後のリバプールをみても、大量補強が身を結ぶことは難しいかもしれない。

 来シーズンの優勝を目指すためには、ある程度個の力にもたよるべきだ。補強案得点力のあるFWとWGの獲得が必須だ。クリスティアーノ・ロナウドガレス・ベイルの名も上がるが新生オランダ代表の21歳にも気になるところだ。PSVのメンフィス・デパイだ。シーズン21ゴールで優勝の立役者になり、FKでも5ゴールと得点能力は高い。CFはどうするべきか。ウィルソンは今年センセーショナルな活躍を見せたハリー・ケインに続く選手として名高い。重要な役割を任されることになるのは間違いない。ただユナイッテッドには同等、もしかしたらそれ以上の選手がいる。現在ディナモ・ザグレブにローン中のアンヘロ・エンリケスだ。チリのA代表にも選出された21歳で、今シーズン16ゴールを記録している。ザグレブはもちろん完全移籍を狙っているようだが、ありがたいことに契約は進展していない。ハールとも相思相愛のようで、エディソン・カバーニなどに大金をかける必要はないだろう。

 MFは難しいところだ。ドルトムントイルカイ・ギュンドアンが契約延長をしないと発表した。『skysports』がユナイテッドとギュンドアンの契約合意を報じたすぐ後で、今後も何かしらの進展はあるだろう。ただ怪我体質の彼にプレミアリーグが合うかどうかは非常に心配な点だ。ポール・ポグバはたびたびユナイテッド愛を強調しており、連れ戻す価値もあるだろうし、可能性も高いだろう。アカデミーに刺激を与えることもできる。

 DFにもユナイテッドとの関係が噂される選手がいる。ドルトムントマッツ・フンメルスだ。今シーズンの出来は厳しいものかもしれないがそれでも世界最高のCBになれる人材だ。獲得第一号になりそうな選手はサウサンプトンSBナサニエル・クラインだ。HG枠で、今後のイングランド代表のポジションも約束されているはずだ。10日以内に結論を出すようなので非常に楽しみだ。

 次の夏の補強、その行動次第で5年のユナイテッドの運命が変わるといっても過言ではない。そのためにはローン中の選手、U-21の若手たちにも目を向け、若手に投資、必要最低限且つ的確な補強をするべきだ。

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真の「退屈」なチームとは

 今年のプレミアリーグの優勝がほぼ確定した。ジョゼ・モウリーニョがまたひとつ自身の肩書きに加えることになる。終始ほぼ安定した試合を魅せた。「魅せた」というのは間違いかもしれない。やはり今年も「退屈だった。」と思うファンも多いはずだ。リバプールのロジャースからはバスを止めている、など揶揄されていた。失点数No.1はサウサンプトンチェルシーとは一点差。ところが現時点でのチェルシーの27という数字はアーセナルが無敗優勝を成し遂げた03-04シーズンは26、07-08のマンチェスターユナイテッドが優勝した22と比べても際立って少ないというわけではない。例年並みかむしろ歴代より若干多いかもしれない。守備戦術の一言で片付けるのは難しい気もする。モウリーニョへの「バス」批判はインテルVSバルセロナでも話題になったが、少なくとも今年は批判の対象にはならないはずだ。

 「バス」戦術は特に対ビッククラブの試合ではよく見られたような印象を受けた。終始攻めの姿勢も失点も少なかった。それでも負けることはなかったし、確実に勝ち点を重ねた。それが今年の優勝の要因だと個人的には思っている。試合の開始前からスペシャル・ワンの思惑どおりだった。対戦相手のサポーターからしたら退屈だったかもしれなが、一歩下がった立場から見るととても魅惑的に映った。チェルシーは守備的だったかもしれないが、ほかのクラブより完璧なのは間違いないし、優勝は優勝だ。批判するより先に守備陣を褒めるべきだ。

 批判がふさわしいはその他のチームだ。マンチェスターユナイテッドマンチェスターシティ、リバプールアーセナルはどれも優勝チームにはふさわしくなかったし、あまりにも好不調の波がひどかった。負傷者も要因のひとつかもしれないが、一年を通じて安定したパフォーマンスも出来ず、補強も完璧に当たったわけではなかった。特にブレンダン・ロジャースとマヌエル・ペジェグリーニには解任の噂が絶えなかった。来季に向けて何か変えていかないと、このままでは来季も優勝はチェルシーになるかもしれない。すべてにおいて、明確なプランを用意することが必要だ(別の記事で触れたいと思う)。今年のプレミアリーグのレベルが低いとの印象を受けたのは、他のチームのレベルが低かったからでもあるだろう。

 もうチェルシーはいままでのチェルシーではない。モウリーニョが帰ってきたのだ。そのことを自覚しないと今後も優勝は難しい。スペシャル・ワンの肩書きは増え続け、他のファンはフラストレーションが溜まる一方だ。そしてチェルシーはいつまでも「退屈」と思われ続けるだろう。